この夏が終わる前におすすめしたいソウル店のロングライフデザイン、全羅北道南原市で作られる竹柄のうちわをご紹介します。
全羅北道南原市朝山洞は1910年代から家族中心の家業を中心にうちわを作ってきた地域です。 ここで生産された高品質のうちわは日本や中国などに輸出され、年間生産量が数千個、多くて数万個と、全州の次に生産量が多い地域でもありました。
今は扇風機やエアコンの普及で日常的にうちわを使うことが少なくなり、観光客のお土産需要がほとんどとなりました。そしてそれすらも安価な輸入品が市場を占領している状況の中で、南原うちわの命脈をかろうじて保ってきたのが「南原チェ・スボンうちわ工芸」。故チェ・スボンさんの活動を引継ぎ、現在は妻のキム・ボクナムさんとご家族が生産を続けています。
50年前から南原市で伝統うちわを作ってきたチェ・スボンさん夫婦は、すべての製作過程を手作業で行っています。南原うちわの竹の節の編み方と竹の弾力性、うちわを際立たせる韓紙の質感などは、世界的にも非常に特別なもの。特に、節を一定の大きさに分割する工場と、節を編む工程には、細心の注意が必要で、長い技術と精度を求められます。
ソウル店で紹介するうちわは「双竹線」と呼ばれる作り方をしています。製作過程をご紹介します。
1. うちわの柄(持ち手)を作る
長い竹をうちわの長さに切った後、柄の部分を除いた残りの本体部分を2回に分けて半分にし、中身の節部分を取り出します。
2. うちわの骨を作る
本体となる竹を40数枚に割り、骨を作ります。しごいたり削ったり調整をして形にしてゆきます。絹糸を交互に編み込むようにして、骨を放射状に広げます。
3. 韓紙を貼る
良質の小麦粉を数日水に浸して、糊を作っておきます。薄い韓紙に糊を塗り、骨の上に貼ります。骨と韓紙をともにうちわの形に切り取り、縁にも韓紙を貼り付けます。
4. うちわの柄を仕上げる
持ち手となる部分は、より丈夫になるように、2本の竹を重ね合わせ、最後に紙を巻いて固定しています。
ソウル店で取り扱っている2種類のサイズのうちわ。竹と韓紙で作られたうちわは、大きなサイズでも持ちやすく軽いので、気軽に使えます。最初に製造した50年前はさらに大きなサイズを作っていたそうですが、現代にあわせてサイズが小さくなってきました。こちらで紹介している大きいサイズのうちわは、全長40cmほどあり、家やオフィスに置いて必要な時にいつでも使うことができます。小さなうちわは30㎝弱で、日常的に携帯して暑い日の外で使うのに便利なサイズです。キッチンで粗熱をとるのにつかったり、子どもの昼寝をあおいでやったり、夏に限らず家の中で思わぬ使いどころがあります。主張しないデザインは家の中で目立ちすぎず生活になじみます。
しっかりした作りなので、風呂敷で包んで贈り物にするのもおすすめです。
このように飽きのこない簡潔なデザインの手作りうちわは南原うちわの特徴でもあり、韓国国内にもたくさん製造・流通しているわけではありません。カラフルな絵が描かれたうちわが多い中、韓紙の質感と真っ白さが際立ちます。
朝鮮時代には、夏の始まりである「端午の節句」の際、王様に端午のうちわを作って献上していたそうです。「夏の暑さを吹き飛ばしましょう」という意味が込められていたのでしょう。
今年の夏は、韓国の南原の伝統的なうちわで、暑さをしのぎ、厄を吹き飛ばそうとした昔の人々の知恵を感じてみてはいかがでしょうか?韓国の夏を代表するロングライフデザインでおすすめです。