金属製の箸を使う唯一の国、韓国。韓国らしいテーブルウェア、鍮器のスッカラ・箸セットをご紹介します。
箸文化が発達したアジア諸国の中でも、今も昔も食事をするときに金属製の箸を使う国は韓国だけです。韓国で金属箸を使うようになった由来は、「毒の確認のため」でした。銀で作った箸は、ヒ素に反応して黒くなるため、毒の有無を判断することができると考えたからです。韓国でも毒見役の「気味尚宮」と呼ばれる役職があり、王様が食べ物を食べる前にあらかじめその食べ物を味見して、食べ物に毒が入っていないかどうかを確認していたそうです。
当時、ほとんどの庶民は銀箸を持つ余裕はありませんでしたが、それに代わる金属製の箸に対する憧れがあったと言われています。そのため金属をできるだけ節約させる意図から、日本や中国に比べると、箸の形状は小さくて平らな形となり、さまざまな金属箸が普及し始めました。
それから現在に至るまで、金属箸は木製の箸に比べると耐久性に優れているなどの利点から、今もなお安定的に使われています。金属箸、金属スプーンの中でも重量と耐久性に最も優れた素材が“鍮器(真鍮)”です。
鍮器製品をロングライフデザインとしておすすめする理由
朝鮮鍮器工房の「スッカラ・箸セット」のスッカラ(スプーン)と箸は、韓国で最も普遍的に長く愛されてきたシンプルなフォルムをしています。クラシックなデザインで親しみやすくも高級感があり、安定感のある重量感と手に馴染むグリップ感は誰にでも使いやすいです。
鍮器製品をロングライフデザインとしておすすめするもう一つの理由は、丁寧に手入れをして使わなければならない道具だからです。素材の特性上、長い時間使っていると色が変わることがあり、磨いて管理しながら使わなければなりません。しかし、手間をかけたり丁寧に手入れをして使うことで、使うほどに「自分の道具」に対する愛着が湧き、手入れをした上にみられる経年変化から初めて現れる鍮器の表情と色合いと艶は、鍮器製品の最大の魅力です。
初回使用時のお手入れ方法
1.ぬるま湯200〜300ccに酢10ccを入れ、10〜15分間浸けておきます。この過程は、金属臭を消し、色をより美しく保ち、水が触れると形成される酸化膜を一度剥がす役割をします。変色が少なくなります。
2.スポンジに中性洗剤をつけ水洗いしてください。
3.水気を必ずきれいに取り除いてください。水気が残ると染みが生じることがあります。
4.初めて使用するときは、なるべく数回洗った後、水気を取り除くと、きれいな色のまま使用することができます。
普段の使用時にもスポンジに洗剤と酢を混ぜて食器を洗うと汚れ防止に効果的です。初期管理がうまくいけば、手の跡(熱、油など)、材料跡も残りにくくなります。
大切な方への贈り物にも
スッカラと箸は、韓国の風呂敷・ポジャギで丁寧に包んだものを箱に入れています。シンプルながらも気品あるパッケージなのでプレゼントにもおすすめ。特に韓国では、お正月やお盆などの節句に親や親戚への贈り物を準備しますが、伝統的な鍮器製品はその時の贈り物としても人気です。スッカラと箸のカトラリーセットは食器よりも比較的使いやすく、お手入れも簡単なので、どなたにでも喜ばれるプレゼントになるでしょう。食卓を通じて直接感じることができる韓国らしさと、健康を考えた古来より伝わる韓国の食文化を、ぜひ皆さんに体験していただきたいと思います。
鍮器(真鍮)とは?
鍮器は真鍮のことで、78%の銅に22%の錫で合金化した青銅の一種です。日本では、平安時代に使用されていたことや、江戸時代に貨幣として流通していたことがわかっていますが、韓国における鍮器の起源は青銅器時代にさかのぼります。高麗と朝鮮時代には合金技術が発達し、貨幣、金属活字、各種楽器だけでなく、生活食器が作られ、広く使われるようになりました。
優雅な黄金色から「美学的に完全な器」と呼ばれているだけでなく、鍮器が持つ殺菌機能と農薬や有毒物質に反応する科学的性質のため、健康的で安全な食生活を支えてくれる点や、他の金属に比べるとあたたかい料理は温かく、冷たい料理は冷たくキープすることで、おいしさをより感じられるのも鍮器の利点の一つです。
このように、鍮器は美しいだけでなく、科学的にも良いとされている韓国古来の素材ではありますが、最近では管理が難しいという認識や、ステンレスなどの代替品の普及に押され、一般生活者の食卓から姿を消し、韓国国内でも一部の高級韓国料理店などでしか見ることができなくなっています。そのような環境の中でも、鍮器の優れた美しさと科学的な機能を伝え、現代生活に提案する鍮器工房があります。
ソウル店で紹介する「朝鮮鍮器工房」は京畿道始興市にて、3代にわたって鍮器の食器やカトラリーを作り続けている小規模な工房です。45年以上の経験を持つ8人の技術者が集まり、手作業で鋳物の鍮器を作り続けており、1978年からは各種文化財の復元や無形文化財との協業を通じて成長してきました。これらの協業経験を基に、自社開発しているオリジナルのデザインの食器やカトラリーは、古くから長く使われてきた鍮器にモダンさを加え、鍮器の本質を生かしながら現代の食生活にも溶け込む魅力があります。